照明計画とは?静岡市の工務店が配灯・調光・色温度の考え方を解説
こんばんは、かおり木工房の宗野です。
九月も半ばに入り、静岡市でも日の入りがずいぶん早くなってきました。夕方の五時を過ぎるとリビングの奥がぼんやりと暗く感じる、そんな季節です。この時期になると、打ち合わせの席で「照明って、どう決めればいいんでしょうか」というご質問をいただくことが増えます。
間取りや断熱の話はじっくり時間をかけて詰めるのに、照明だけは最後の打ち合わせでカタログを見ながら十五分で決めてしまう。実は、そういう進み方をしている家がとても多いのです。ところが住み始めてから「なんとなく暗い」「夜になると落ち着かない」と感じる原因の多くが、この最後の十五分に潜んでいます。
照明の失敗は「暗い」より「まぶしい」で起きる
照明の後悔というと、多くの方が「暗すぎた」を想像されます。けれど実際に暮らし始めた方から聞くお困りごとで多いのは、むしろその逆です。天井の真ん中に大きなシーリングライトがひとつだけ付いていて、部屋全体が明るいのだけれど、なんとなく落ち着かない。テレビを見ているとまぶしい。夜になると気持ちが切り替わらない。こうした声のほうが圧倒的に多いのです。
これは明るさの量ではなく、明かりの質と配置の問題です。人の目は、天井の一点から降ってくる強い光を長時間浴びると疲れます。学校の教室や事務所の照明を思い出していただくとわかりやすいと思います。あの明るさは作業のためのものであって、家族がくつろぐための明るさではありません。
配灯は「数」ではなく「役割」で考える
照明計画の一つ目の軸が配灯、つまりどこに何個の器具を置くかという話です。ここで大切なのは、器具の数を決めることではなく、その部屋で何をするのかを先に決めることです。
たとえばリビングなら、家族が集まって話をする時間、テレビを見る時間、子どもが宿題を広げる時間、来客をお迎えする時間があります。ダイニングなら食事をする時間と、片付けをする時間があります。それぞれで必要な明るさの場所と量は違います。ひとつの器具で全部をまかなおうとすると、どの用途にも中途半端になってしまうのです。
そこでおすすめしているのが、小さな明かりを複数に分ける多灯分散という考え方です。ダウンライトをいくつか散らし、食卓の上にはペンダントを一灯、ソファの脇には床置きのスタンドを一台。こうしておくと、全部を点ければ明るく、必要なところだけ点ければ落ち着いた雰囲気になります。器具ひとつあたりの光は弱くていいので、まぶしさも出にくくなります。
焼津市や藤枝市でお引き渡しした住まいでも、この多灯分散に切り替えたお宅からは「夜の過ごし方が変わった」という感想をいただくことが多いです。特別なことをしているわけではなく、明かりの置き場所を暮らしに合わせただけなのですが、体感はずいぶん変わります。
調光は「あとから足せない」のが厄介
二つ目の軸が調光です。明るさを段階的に落とせる機能のことで、リビングや寝室ではとても効きます。夕食のあと、少し明かりを落とすだけで、部屋の空気が休息のほうへ切り替わります。
ここで気をつけたいのが、調光は後から簡単に足せないという点です。壁のスイッチを調光対応のものに変えるだけでなく、照明器具そのものが調光に対応している必要があります。新築時に配線とスイッチを決めてしまうため、住み始めてから「やっぱり調光にしたい」と思っても、器具とスイッチの両方を交換することになります。
とはいえ、家じゅう全部を調光にする必要はありません。費用も上がります。くつろぐ場所と眠る場所、つまりリビング・ダイニングと寝室に絞って入れておく。これで実用上はほとんど困りません。反対に、キッチンや洗面、廊下は常に一定の明るさで問題ない場所ですので、割り切って構いません。
色温度で家の印象は大きく変わる
三つ目の軸が色温度です。光の色みのことで、ケルビンという単位で表されます。数字が低いほど夕日のようなオレンジがかった色、高いほど昼間の空のような白い色になります。一般に、電球色は約二千七百ケルビン、温白色は約三千五百ケルビン、昼白色は約五千ケルビン前後です。
この選び方には、暮らしのリズムという根拠があります。人の体は、朝から昼にかけて白く強い光を浴びると活動的になり、夕方以降にオレンジ寄りの弱い光を浴びると休息のほうへ傾いていきます。夜の照明が昼白色のままだと、体は「まだ昼だ」と受け取ってしまいます。夜になっても気持ちが休まらない、寝つきが悪い、といったお困りごとの背景に照明があることは、決して珍しくありません。
私たちがおすすめしているのは、くつろぐ場所は電球色か温白色、手元の作業がある場所は温白色から昼白色という分け方です。特にキッチンの手元灯や洗面台の鏡まわりは、白めのほうが見やすく、化粧や髭剃り、食材の色の確認がしやすくなります。一方で、同じ家の中で色みがばらばらだと落ち着かないので、リビングとダイニング、廊下といったつながった空間は色温度をそろえるほうが自然に見えます。
照明計画は断熱・窓の計画とセットで考える
もうひとつ、工務店としてお伝えしておきたいことがあります。照明の計画は、窓と断熱の計画と切り離せないということです。
昼間に自然光がしっかり入る家は、そもそも照明を点ける時間が短くて済みます。窓の位置と大きさ、軒の出、隣家との距離。これらを設計段階で丁寧に検討しておけば、昼間の電気代は自然に下がります。ただし、大きな窓は熱の出入り口にもなるため、断熱性能が伴っていないと、明るいけれど夏は暑く冬は寒い家になってしまいます。
かおり木工房が松尾式のG3断熱と高い気密性能にこだわっているのは、まさにここが理由です。断熱と気密が確保できていれば、明るさのために窓を計画的に取っても、室温が振り回されにくくなります。静岡は温暖と言われますが、冬の朝の冷え込みは本物です。明るさと暖かさの両立は、性能の裏付けがあってはじめて成り立ちます。
照明の消費電力そのものは、LEDが当たり前になった今、家全体の電気代のなかでは大きな割合ではありません。省エネの全体像については、資源エネルギーの省エネポータルサイト(資源エネルギー庁 省エネポータルサイト)でも家庭のエネルギー消費の内訳が公開されていますので、一度ご覧いただくと全体感がつかめると思います。
打ち合わせの前に決めておきたいこと
照明の打ち合わせにお越しいただく前に、三つだけ考えておいていただけると、話が一気に進みます。
ひとつ目は、それぞれの部屋で夜に何をするか。テレビなのか、読書なのか、家事なのか。二つ目は、家族のなかで夜型の人がいるか。就寝時間がずれるご家庭では、明かりの分け方が変わります。三つ目は、今のお住まいで「暗くて困っている場所」と「まぶしくて嫌な場所」がどこかということです。今の不満は、次の家の設計条件そのものです。
静岡市・焼津市・藤枝市で家づくりを進めていらっしゃる方から、この三つをお聞きできれば、あとはこちらで配灯図に落とし込めます。難しい用語を覚えていただく必要はまったくありません。
まとめ
照明計画で押さえるべきなのは、配灯と調光と色温度の三つです。天井にひとつではなく用途に合わせて分散させること、くつろぐ場所と寝る場所には調光を入れておくこと、そして夜はオレンジ寄り、作業の場所は白寄りという色温度の使い分けをすること。この三つを設計の早い段階で決めておけば、住み始めてからの「なんとなく落ち着かない」はかなり防げます。
そして、明るさの土台をつくるのは昼間の自然光であり、それを気持ちよく取り込めるかどうかは断熱と気密で決まります。照明は最後に決めるおまけではなく、間取りと性能と一体のものだとお考えください。静岡市で新築をご検討中でしたら、間取りの段階からご一緒に考えていければと思います。
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