上がり框の高さとは?静岡市の工務店が玄関の段差と式台の考え方を解説
こんばんは、かおり木工房の宗野です。
朝晩が冷えてきて、玄関で靴を履くときに腰をかがめるのがつらい、という声を聞く季節になりました。玄関の土間から床に上がる部分の段差、つまり上がり框の高さは、設計図の上ではほんの数センチの違いです。それでも、毎日何度も上り下りする場所ですから、体への負担にははっきり差が出ます。今日はこの上がり框の高さと、式台の考え方についてお話しします。
上がり框の高さはどこで決まるのか
上がり框とは、玄関の土間と室内の床が接するところに入る、横長の材のことです。この框の上端と土間の高低差が、いわゆる玄関の段差になります。
この高さは、好みだけで自由に決められるものではありません。土間コンクリートの高さ、床下の構造、断熱の納まり、外の地面からの高さなど、複数の条件が重なって決まります。特に、床下に十分な高さを取る構造の場合や、基礎断熱で床下を室内側として扱う場合は、床のレベルが上がり、その分だけ土間との差が大きくなります。
昔の日本の住宅では、上がり框が三十センチを超えることも珍しくありませんでした。床下の通風を確保するために床を高くしていたためです。最近の住宅では十五センチから二十センチ程度に収まることが多く、フラットに近づける設計も増えています。ただし、外の地面から玄関土間までの高さも別にありますので、道路から室内までのトータルの段差で考える必要があります。
段差が体に与える負担を具体的に考える
段差は、低ければ低いほど良いというものではありません。上がるときの負担と、腰掛けたときの使いやすさは、必要な高さが逆になるからです。
足を上げて上がる動作だけを考えれば、段差は低いほど楽です。一般的な階段の一段が十八センチから二十センチ程度であることを考えると、玄関の段差もその範囲に収まっていれば、健康な大人にとって大きな負担にはなりません。ただし、膝や股関節に不安がある方、高齢のご家族にとっては、二十センチの一段はかなりの負荷です。
一方で、框に腰掛けて靴を履くことを考えると、低すぎる段差は使いにくくなります。腰掛けるのにちょうどよい高さは四十センチ前後で、これは椅子の座面の高さです。上がり框が十五センチしかない家では、そこに座ると膝が高く上がり、立ち上がるときに力が要ります。若いうちは気になりませんが、年齢を重ねると、この立ち上がりの動作が負担になってきます。
消費者庁も、高齢者の家庭内での転倒や転落について注意を促しています。玄関は、靴を履く、荷物を持つ、扉を開けるといった動作が重なる場所ですので、段差そのものだけでなく、動作の複雑さが関係してきます。家庭内の事故防止に関する情報は消費者庁のウェブサイトでも紹介されています。
式台という選択肢
段差を上がりやすくする方法のひとつが、式台です。式台は、上がり框の手前に設ける一段低い板のことで、大きな段差をふたつに分ける役割を持ちます。二十センチの段差を、十センチずつの二段にするイメージです。
式台には、造り付けにする方法と、置き型のものを使う方法があります。造り付けは見た目がすっきりして、動いたりずれたりしません。玄関の広さに余裕がある場合に向いています。置き型は後から追加でき、必要がなくなれば外せるという利点がありますが、滑りや転倒に配慮した固定が必要です。
注意したいのは、式台を入れると土間の有効な面積が減るという点です。玄関の土間は、靴を並べ、傘立てを置き、ベビーカーや自転車を一時的に置くこともある場所です。もともと土間が狭い計画に式台を足すと、扉の開閉と動線がきつくなることがあります。新築の段階から式台を想定するなら、その分の土間の広さを最初から見込んでおくほうが無理がありません。
老後まで見据えるなら手すりとベンチも一緒に
玄関の上がり下がりを楽にする要素は、段差の高さだけではありません。手すりがあるかどうかで、必要な足腰の力は大きく変わります。縦手すりは体を引き上げる動作を助け、横手すりは移動の安定を助けます。玄関では、框の位置に縦手すりを一本入れておくだけでも、ずいぶん違います。
いま手すりが必要でなくても、後から付けられるように壁の下地を入れておくことをおすすめしています。下地がない壁に後から手すりを付けると、位置が制約されたり、補強のために仕上げをやり直したりすることになります。新築時に下地を入れておく費用は、あとから工事をするのに比べれば小さなものです。
ベンチを設けるのも有効です。框に腰掛ける代わりに、高さ四十センチ前後のベンチを土間側に設けておくと、靴の脱ぎ履きが安定します。ベンチの下を収納にすれば、玄関まわりの片づけにも役立ちます。静岡市でご相談いただく五十代六十代のお客様では、この玄関のベンチと手すりの下地を、最初から計画に入れる方が増えてきました。
玄関の温度も忘れずに
もうひとつ、実際に暮らし始めてから効いてくるのが玄関の温度です。玄関は外部に面した扉があり、土間コンクリートは外の地面とつながっています。断熱がしっかりしていない家では、冬の玄関は家の中で最も冷える場所になります。
寒い玄関で靴を履くとき、人は自然と動作を急ぎます。急げばバランスを崩しやすくなり、段差のある場所ではそれが転倒につながります。焼津市や藤枝市も含め、静岡は温暖と言われますが、冬の朝の冷え込みは本物です。玄関土間まわりの断熱と、玄関ドアの断熱性能をきちんと選んでおくことは、単に快適さの問題ではなく、安全の問題でもあると考えています。
まとめ
上がり框の高さは、上がりやすさと腰掛けやすさという、相反する要求のあいだで決まります。どちらを優先するかは、ご家族の年齢や体の状態、玄関の広さによって変わります。段差を低くするか、式台で分けるか、ベンチを別に設けるか。選択肢はいくつもありますので、図面の数字だけで判断せず、実際にモデルハウスや完成した家で上がり下がりを試してみてください。
そして、手すりの下地と玄関の断熱は、いま必要かどうかにかかわらず、新築のときに手を打っておく価値があります。静岡市、焼津市、藤枝市で家づくりをお考えの方は、玄関という小さな場所にこそ、将来の暮らしやすさが表れるということを、ぜひ頭の片隅に置いていただければと思います。
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